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ところによって一時雨

エッセイ

シリーズエッセイ27
ところによって一時雨
渡邉大蔵

 24節気というものがあります。余程カレンダーを注意深くみている人か特殊技能を持っている人のほかは、毎年その全てを正確に覚えているという人はいないでしょう。

 私などは、節分祭を奉仕して立春を思い起こし、暑中見舞と残暑見舞の時候の区切りとして立秋を確認するくらいで、祖霊祭を奉仕する春分、秋分を含めても24節気のなかで2つの節と2つの中気の4節気で一年のサイクルが間に合っています。そして、残りの20節気を思い起こさせるのは、神職手帳の他はテレビの天気予報です。気象予報士の「今日は暦の上では云々」というあれです。ハワイ島ヒロでも日本からのニュースを生中継か一日遅れで視ることができ、常夏といわれる南国の島で24節気にふれる機会を得ます。

 日本の方にはハワイは常夏というイメージが強いでしょうが、ハワイ島は四国の半分ほどの面積の島でありながら地球上の気候帯区分13のうち11が存在(ハワイ島に存在しないのは北極気候とサハラ気候のみ)するという、いわば一つの大陸のような島で、その中の東端に位置するヒロはアメリカ国内有数の雨の多い地帯で年間平均気温が25度前後と極めて過ごし易い地域です。ですので、私の感覚では、ヒロは常夏というよりむしろ常春といった感じで、麗らかすぎて植物も人間も大きく育ちます。

 降り注ぐ陽光と降り注ぐ雨に毎日のように接していると、もう一つの天気予報でよく耳にするフレーズ「晴れ時々曇ところによって一時雨」の中の「ところ」にまさしく完全に合致する地域がハワイ島ヒロであると納得します。

 日本にいた頃は、新潟に住んでいた時も伊勢で過ごした学生の4年間も、天気予報で先のフレーズを聞くたびに、何とでも捉えられるいい加減な予報だと思っていましたが、ヒロに住んでこれほどしっくりくる予報もないと我が身の不明を恥じました。「賢者は歴史に学び愚者は経験に学ぶ」先哲ビスマルクよ御寛恕を。世の中には知らないこと、予測の難しいことの方が多いものです。

 天気の予測よりも遥かに測り難いのが人生設計における将来で、いずれ遠くない時期に常春のハワイ島ヒロから四季の豊かな日本の生まれ故郷である燕市へ移住(5年前にアメリカに帰化しているので、帰国ではありません)します。ヒロに移住した当時は永住と思い定めていましたが、予報は外れることが多いもので、今、アメリカ人として再び海外移住することとなりました。

 室生犀星は「ふるさとは遠きにありて思ふもの」と詠じました。将来、日本において、この「晴れ時々曇ところによって一時雨」という予報を聞いたときに、第二の故郷ともいうべきハワイ島ヒロが遠く遥かに偲ばれるでしょう。

(ハワイ・ヒロ大神宮宮司/燕市・戸隠神社権禰宜)
【平成23年10月1日「庁報新潟」第93号】
※内容は庁報掲載時のものです。

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