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オールドボーイ

エッセイ

シリーズ・エッセイ12
オールドボーイ
佐藤英尊

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 今年も信州白馬村八方尾根に大学時代のスキー部OB15名が集まった。もちろん滑ることが中心だが馴染みの宿で飲みながらのおしゃべりがまた楽しい。

 八方尾根は長野オリンピックのスキー競技会場となった北アルプスの唐松岳の尾根づたいに開発された雄大なスロープを持つ。中心となるリーゼンスラロームコースは3千メートルのダウンヒルを楽しめる本州有数のスキー場である。このコースでは、毎年大回転競技が一般参加者を募って開かれている。折りしも今年は60回の記念大会ということで往年の名選手でありオリンピックアルペン3冠に輝いたオーストリアのトニーザイラーが来村して大会に花を添えたとのことであった。見せてもらった記念写真に写っていたのは往年の美男子とは似ても似つかぬみごとなスキンヘッドに変身した紳士であった。

 ザイラーといえば映画「白銀は招くよ」で余すところなく披露した美技、ウェーデルンをもって日本中のスキーヤーを魅了した。昭和30年代、これをマスターしようとオーストリースキー術の習得に熱中した。ボーゲンだ、シュテムクリスチャニアだと舌をかみそうな外来語を口にしながらシステム化されたスキー術の魅力に取り付かれたものである。

 あれから半世紀、スキー術もスキーそのものも大きく変わった。昔ながらの205㎝のスキーを持って参加しているのは珍しく皆にひやかされるのだが、カービングなどという新しい板にはなじめない。

 リフト4基を乗り継いで高度2千メートルの第1ケルンへ、望めばさらに第2、第3ケルンを経て唐松岳の頂上に至るのだがリフトはここまでである。五輪のマークも色鮮やかな長野オリンピック滑降競技のスタート小屋が保存されている辺りから滑り始める。ビデオ取りのY氏に雄姿?を撮影してもらいながら雪質のよい斜面のスラロームを楽しむ。

 同じ釜の飯を食った仲間の絆は不思議である。生活を共にしながらお互いにいいところもわるいところもさらけ出して付き合ったせいなのだろう。たった一泊の束の間の時を楽しんで来年の再会を約す。

 医師もいる、会社社長も、様々な職種のものが集まるが、垣根など全くない。60半ばを過ぎてなおシニアの大会に出場する先輩もいる。小生も刺激を受けて還暦を過ぎて、思いもしなかったスキーを再び始めることになった。

 そうだ、できるうちが花だ、時間を惜しんでやりたいことをやろう。それが人生の楽しみ方だ。そう思うと不思議に元気が出てくる。ザイラーの滑りは70歳の今も華麗だという。いい歳してなんていわないで、生涯現役を決め込む気概は必要である。

 5月には10人の仲間とスイスのツェルマットスキー場で滑ろうと今から楽しみにしている。

(糸魚川市・大神社禰宜)
【平成18年5月1日「庁報新潟」第77号より】
※内容は庁報掲載時のものです。

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