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歴史が決める

エッセイ

シリーズエッセイ26
歴史が決める
栗田明廣

「好きか嫌いかは、自分が決める。
良いか悪いかは、社会が決める。
正しいか正しくないかは、歴史が決める。」

 これは、小学校校長から北海道教育大学を経て、現在植草学園大学教授の野口芳弘氏の言葉です。「流行は時代の流れによって変わり、世間で良いと言われていることが、必ずしも正しいとは限らない。教育とは、歴史に責任をもつ仕事である」と言っています。

 今年3月、小学校の卒業式に参列する機会がありました。卒業生10数名の小規模校でしたが、卒業生の凛々しい姿、在校生との「呼びかけの言葉」に涙ぐむ姿などとても感動的でした。卒業証書授与では、校長先生が卒業生一人一人に名前と番号を丁寧に読んで証書を渡しておられました。特に、最初と最後は、証書の全文を読んでいました。でも、読んだ中には生年月日はありません。卒業証書に記されていないのか、個人情報保護のために読まないのか分りません。

 また、同じ3月の末に保育園の卒園式に参列させていただきました。卒園児の名簿順に興味を持ちました。50音順ではなく、住まいの地区毎でもないのです。何の順だろうと考えながら園長先生の卒園証書を渡すのを聞いていました。途中まで聞いてようやく気が付きました。園長先生は優しい声で、名前と生年月日を読んで、1人1人に証書を渡して折られました。卒園名簿は生年月日の順だったのです。

 地域が同じで子供たちは両方に通うことになりますが、生年月日の扱いに関して考え方は異なります。そして、私が在職中とも違っています。

 さて、私の地域では春祭りや秋祭りに併せて氏子が個人の人生儀礼のお参りをするところが多くあります。初宮詣、七五三、厄祓、喜寿や米寿などの年祝いに、清酒や玉串料を奉納します。宮司は祝詞の中で神様に報告し今後の健康と安全を祈願します。本人は、玉串拝礼をやり、その後の直会では氏子皆から祝ってもらいます。普段顔を合わせることが少なく、まして年齢まではっきり覚えていないこともあり、情報交換の場でもあります。
「もう厄年になったかね。早いね」
「お前さんが今年喜寿なら、俺は来年だな。」
「白寿になってもお参りできるとは元気なもんだ。」

 数年前、「忘れていると困るから、宮司さん、数え年と厄年等が分るように一覧表にしてもらえないか」という人がいました。私は待ってましたとばかり、生まれ年と数え年、厄祓や年祝いを入れた一覧表を作ったのです。そして、これまで神宮大麻の頒布時に各神社の御神札も頒布してきましたが、数え年一覧表も全戸に配布することにしました。

 不易と流行は永遠の課題です。流行を大きく変えることは難しくとも、伝統を残す努力はできます。「歴史を意識すること」「歴史に対して責任を持つこと」を大切にしたいと考えています。

(柏崎市西山町・神明社宮司)
【平成23年05月1日「庁報新潟」第92号より)
※内容は庁報掲載時のものです。

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