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還暦奉告同級会

エッセイ

シリーズエッセイ30
還暦奉告同級会
長谷川健一

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 今年の5月19、20日と十日町高校同級会に、凡そ30年ぶりに出席した。昭和46年に卒業してから1、2回ほど顔を出したが親友と呼べるような学友はおらず、あまりなじめなかった覚えがある。

 それ以降は欠席届を出すことが常となったが、今年の同級会案内は還暦奉告の神宮参拝といふことで神職としては断るわけにはいかない。ここは神道教化活動実践の良い機会と捉え、DVDや資料などを揃え始めたのである。

 我が3年3組は現在49名であり、今回参加するのは男10名、女13名の合計23名である。早朝、私を含め10名が観光バスで十日町を出発した。途中、千曲川の道の駅で1名、更に名古屋駅前で11名が乗り込んだ。

 久しぶりの学友は卒業写真の面影とはかけ離れており、皆一様に戸惑いの色を浮かべたが、中でも私の変わり様は特別らしく、最後に外宮で待ち合わせをした女性は、暫く私をバスの添乗員と決めつけていた。

 外宮参拝の後、二見ケ浦に向かい、二見興玉神社と夫婦岩を自由参拝。いつしか皆、戸惑いも解け、和気藹々とした雰囲気で宿泊する鳥羽「胡蝶蘭」に辿り着いた。

 浴衣に着替え一風呂浴びると、大宴会が始まった。幹事の進行に従い先ずは乾杯。それから1人ずつ、改めて自己紹介と近況報告である。皆、年を重ねた分だけ様々な苦労と経験を積んでいた。

 いよいよ私の順番が回ってきた。準備していた式年遷宮の話をするつもりであったが、ステージに上がった途端、なぜか気が変わった。その場の空気がそうさせたのかも知れない。今にして思えば、和やかな宴会の席での堅苦しい長話は、反って寒々とした逆効果を生んだことであろう。宴会の後はホテルのカラオケバーで二次会を楽しみ、部屋に戻っても、延々と酒盛りは続いた。

 翌朝は小雨交じりの中、内宮正式参拝に出発した。日曜日とあって内宮は参拝客で賑わっていた。昨晩、神職という自己紹介をしたので参道を歩きながら何人かが神道に関して様々な質問をして来たが、どういうわけか女性ばかり、不思議である。

 ところで、正式参拝だけは予行演習をしておけばよかったと後で悔やんだ。御垣内での拝礼はバラバラであった。

 奉納神楽は、多くの団体客と一緒に拝殿に詰め込まれたが、お陰で特別太々神楽を拝観することができて皆、感激していた。

 宇治橋を渡り、土産物屋で昼食をとると、これから京都見物に繰り出す女性グループと別れ、帰路のバスに乗り込んだ。名残惜しい気持ちを抑えて名古屋駅前で数名が下車した。残された十日町出発組は、酔うほどに遥か遠い青春時代に想いを馳せ、一層盛り上がったのである。

 なじめなかった今までの同級会と違い、楽しく充実した同級会であった。自分を含め級友たちは、神宮の森で、還暦にして初めて同じ方向を向いていた。

 言うなれば神宮そのものが神道教化の神髄であった。神宮の森の中、太古から変わらぬその清涼な清々しい空気に包まれ、太々神楽奉納神事の流れるような優美な作法、更に雅楽の繊細な音色と華麗な舞楽は、3年3組を、時と場所を超えた別世界に運んでくれたのであった。

(十日町市・千手神社宮司)
【平成24年10月1日「庁報新潟」第96号より】

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