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ある合格祈願祭

エッセイ

シリーズ・エッセイ3
ある合格祈願祭
久我 寛

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 二月下旬のめずらしく暖かな日の午後のこと、二人の女子中学生が合格祈願をお願いしたいと訪ねてきた。

 早速拝殿へ上がってもらい、住所氏名を書いてもらってから、「もし差しつかえなければ、志望校も教えてくれませんか。祝詞の中で神様にお願いしますから」
と言うと、二人は急に顔を見合わせてもじもじし出した。

「いや、志望校は言いたくなければいいですよ」
と言っても、二人はまで落ち着かない様子である。そのうちひそひそと何か話し合っていたが、やがて一人が、
「あのー、本当は受験するのは自分たちではなくて・・・」
と言い出した。

 私はその時ちょっと思い当たるところがあって、
「あ、そうかボーイフレンドのための合格祈願なんだ。当たりでしょう」
と言うと、二人はにっこりうなずいて、
「そんなのって、駄目でしょうか?」
と心配そうに私の方を見た。

 実は私がその時思い当たったのには、ある伏線があった。高校在職中、修学旅行で太宰府天満宮を参拝した折、何人かの生徒が合格御守を二体ずつ受けているのを不思議に思って聞いてみると、「ひとつはボーイフレンドへのおみやげデース」と、明るく答えていたのを思い出したからである。

 私は不安そうな二人に、
「ボーイフレンドのために合格をお祈りに来たあなた達のやさしい気持ちは、きっと神様に通じますよ」
と言って、何か彼等からもらったものか写真でもありますかと尋ねた。二人はバッグの中から、ボーイフレンドと並んで撮った小さな写真がびっしり貼ってある手帳を取り出した。

 私はその写真を案に載せて彼女たちの前に置き、一緒に修祓をして合格祈願の祝詞を奏上した。

 終わって、ボーイフレンドには合格御守を、彼女たちには学業成就の御守を授与し、
「合格発表がすんだら、今度は四人で一緒にお参りにいらっしゃい」
と言って送り出すと、二人の中学生は、はじけるような明るい笑顔を浮かべて帰っていった。

(新潟市・神明宮宮司)
【平成14年5月1日「庁報新潟」第65号より】
※内容は庁報掲載時のものです。

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